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ミニマリスト見習いのアラサー女。最小化計画の進捗と、本・音楽・映画の感想

「新潮45」編集部 「凶悪―ある死刑囚の告発―」

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

何か面白そうな映画ないかなぁと映画館のサイトをチェックしていたら、9月21日に公開されるというある映画に辿り着いた。

凶悪

トレイラーを見て「これは公開されたら見に行こう」と即決した。そして、公式HPの作品情報を読んでみて驚愕した。死刑囚が雑誌記者に自身の余罪を告白するという話が、実話だというから。


自らの余罪を告白した死刑囚の名は後藤良次。彼が告発を聞いてもらう相手として選んだのは、新潮社の雑誌記者である宮本太一。ある事件の容疑者としてすでに死刑がほぼ確定していた後藤であったが、実はさらに世間に知られていない殺人事件、それも数件に関与しているという。告発の目的は、主犯であるにも関わらずのうのうと娑婆で暮らしている「先生」に罰を受けさせること。宮本はその犯罪の重大さに戸惑いながらも、後藤の告発の裏付け調査を始める―

ノンフィクションであり、事実を詳細に記述している部分が大半を占める。本当に詳細に丁寧に事件が記述されていて、筆者(編集部)の記者としてのプライド、そしてこの事件を世に伝えたいという熱意をひしひしと感じることができる。

毎日全国で色んな事件が起こっている。そういうニュースを見たり聞いたりすることには徐々に慣れて、薄情なようだけど被害者や遺族への同情もすぐに薄れるし事件のことすら忘れてしまうのが現実だ。後藤や「先生」が起こした事件も、「新潮45」が記事を発表してからかなり大きく報道されたらしいが、たった8年前のことなのに私の記憶にはない(当時高校生だからニュースは見てたはずなんだけどな・・・)。
それでも、後藤の告発や警察や知人などの事件関係者の話、そして被害者がどうやってその人生を終えたのかをこれほど事細かに伝えられると、とてつもない衝撃に打ちのめされる。「これが事件が起こった現場の現実なのか」と愕然とする。

世の中で起こる全ての事件の背景を知ることはできない。はっきり言って、知ったからといって得をするわけでもない。表面の情報だけを得て無関心を決め込んだって別に構わないだろう。でも、筆者が後藤と面会を続ける中で自分の立ち位置を客観視していたように、他人の人生を知ることで自分を知ることに繋がることもあるんじゃないかと思った。


裁判でも嘘(と思われる発言)を乱発していた「先生」も、結局は上告を棄却されて無期懲役が確定したらしい。彼は今何を考えているんだろう。