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ミニマリスト見習いのアラサー女。最小化計画の進捗と、本・音楽・映画の感想

Truman Capote 「In Cold Blood(冷血)」

 

冷血 (新潮文庫)

冷血 (新潮文庫)

 

やっと読み終わった・・・何故だかやたら時間がかかったけど、こんなに巧みに構成された小説を読んだのは久しぶりで満足した。やっぱり名作は名作だわ。

1959年の秋、アメリカ合衆国カンザス州のとある村で、人々から大きな信頼を得ていたHerb Clutterと、彼の妻、娘、息子が惨殺される。平穏だった村で突然起こった大事件に人々は衝撃を受け疑心暗鬼に陥り、犯人に結び付く証拠が極めて少ないため捜査も難航する。そんな中、捜査陣に犯人に繋がる重要な証言が寄せられる。

この作品を知ったきっかけは、「凶悪」というノンフィクション・ノベルだった。この「ノンフィクション・ノベル」というジャンルの元祖が、この「冷血」という作品というわけ。最近ほんとによく感じるけど、読んだ本や観た映画から枝が増えていく感覚が楽しい。その枝が繋がっちゃったりするともっと楽しい。

まず第1章で、Clutter一家の暮らしが豊かな描写で詳細に語られる。人格者と知られるClutter氏や、患いながらも心優しい妻のBonnie、しっかり者でみんなの尊敬を集める娘のNancy、少し変わり者ながら賢い息子のKenyon。4人がいかに穏やかに、そして幸せに暮らしていたのかが存分に伝わってくる。
その間に、犯人となる2人の男、DickとPerryが迫ってくる様子が挟まれる。よく晴れた空を黒い雲が徐々に覆い尽くしていくような、不穏な雰囲気が全体を包み始める。そして、「冷血」な人間に狙われていることなど知る由もないClutter一家は、一夜にして無残な冷たい体へと姿を変えることになる。

2章からは、犯人であるDickとPerryの生い立ちをメインにして、捜査に奔走する刑事たちの人間性なども細かく語られる。情報量がめちゃくちゃ多い割にほとんど退屈しない点に関しては、作者Capoteの才能に感嘆せざるを得ない。過去を客観的に描写している間に挟まれる当事者たちの言葉によって、「これは実際に会った事件なんだ」という事実に引き戻される。よく出来た小説でもあり、事件の詳細な記録でもある。この2点を完全に両立できてるのが凄い。

事件が起こったのが1959年、死刑執行が1965年。この時期、アメリカはちょうどベトナム戦争をしていた時期らしい(歴史に疎いのが残念!)。というと、そろそろ学生運動が本格化し始める時期か・・・ヒッピーもこの時期らへんだったような。まぁ、あまり世の中が明るい空気であったとは想像しがたいね。混沌としてたんだろうなぁ。いつの時代も似たようなもんだろうけど。

訳者あとがきで翻訳者の佐々田雅子さんが指摘しているように、この作品は「家族」に焦点を当てている。豊かで幸せなClutter家、貧しいながら幸せだったDickの家族、そして、貧しく不幸だったPerryの家族。特にPerryが、自分の人生の諸悪の根源が家族であると感じ、そこから世間への憎しみを募らせていった様子が痛々しい。
しかし、彼のような人間みんなが、こんな残虐な犯罪に手を染めるわけではない。似たような幼少時代を過ごしたCapoteも言っているように、人生はどんな方向にも転びうる。憎悪という感情に身を委ねるのではなく、自らの道を選択すればなぁと思う。自制心を育てる時期に色んな脅威に曝されてたんじゃ、ちょっと酷かなとも思うけど・・・やっぱり環境って大事だわ。

そういえば、この翻訳はほとんど引っ掛かるところもなく、すごく読みやすかった。「羊たちの沈黙」ですっかり翻訳本への信頼失ってたけど、ほんと翻訳は人によるんだなと実感。。。とりあえずRED DRAGONとTHE SILENCE OF THE LAMBS買ったから、ぼちぼち読み始めよーっと。