ミニマリズムと読書ときどき映画と音楽。

ミニマリスト見習いのアラサー女。最小化計画の進捗と、本・音楽・映画の感想

箱男(安部公房、1973)

 

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 

 その時の自分に寄り添ってくるような読書ができたときは、なんだか救われたような気分になる。久々に時間を忘れることが出来た。

箱男とは、その名の通り箱を被って暮らしている男のことだ。段ボール箱に覗き窓を開け、頭からすっぽり被ったまま、街を彷徨いながら生きる男。誰もがその存在を黙殺し、もはや存在していないかのように街に溶け込んでいる。しかし、ひとたび箱男に気付いてしまえば、もう無視することは出来ない。覗き窓からこちらを見ている目を無視することは出来ない。

よくよく考えれば常軌を逸している人間をサラッと描いてしまうのが、安部公房の凄いところ。生温い空気とちょっとした恐怖に流されて、日常と非日常の狭間に行くことが出来る。
覗く者と覗かれる者が次々に転換して、自分の立ち位置を確認しようとするとどんどん分からなくなってしまう。箱男を見ていたつもりが、いつの間にか自分が箱男になっている。この混乱は癖になりそうな感じ。

日常からゆるーく離脱できたから、滑落する心配がなくなった。良かった良かった。