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ミニマリズムと読書ときどき映画と音楽。

ミニマリスト見習いのアラサー女。最小化計画の進捗と、本・音楽・映画の感想

シャンデリア(川上未映子、2017)

シャンデリア (Kindle Single)

遂に読みました。

 

初・川上未映子さん。

 

売れているのは知っていたけど、読んだことがなかった。いや、売れているから読んでなかった、という方が正しいかな。最近は「売れている作家には手を出さない」というスタンスもだいぶ崩れてきたんで、その小さく決壊した部分に今回は川上さんが入り込んできたというわけです。

 

“売れっ子作家”の川上さんになぜ興味をもったのかというと、NHKの達人達という番組で「君の名は。」の新海監督と対談しているのを見たからだ。どちらかと言えば、アニメの世界に興味が湧いて新海監督目当てで見始めたんだけど、川上さんの強烈な個性に釘付けになってしまった(もちろん新海監督もなかなかの濃さなんだけどね)。超独特のペースで話し続けながらも、仕事人としての一面も垣間見える。そして何とも言えない色気…

 

「この人に、この世界はどう見えてるんだろう」

単純にそこに興味が湧いた。

 

この小説はいわゆるショートショートの部類で、Kindle Singlesで発表された書き下ろし。デパートとタクシーという極めて狭い範囲で、主人公の女性の心の淀みが鋭く描かれている。

 

主人公の女性は、ぽっと手に入った大金を毎日デパートで景気よく遣っている。老いを覆い隠すかのように着飾った老女たちを軽く蔑みながら、自分も同じように高級品で身を固めている。そうしながら、死にたくなっている。

大金が手に入る前から、特に人生に希望をもっているわけではなかった。そこに大金が入って、自分の上っ面だけ高級に、キレイになった。でも、ブランドシューズの下の足が見窄らしいように、彼女の内面も貧弱なままで希望は湧かない。それをいちばん分かっているのは自分で、だから彼女は死にたがっている、というか死んでもいいと思っている。金で買える高級品で身を固めても、自分に価値があるのか分からない。むしろ、価値なんてないと思っている。だから彼女は死んでもいいと思っている。

 

川上さん、公式サイトでは「トム・フォードのココア・ミラージュが情熱の核」と言っている。

 

ココア・ミラージュは1万円もするアイシャドウなわけで、他にも凡人のわたしは知らないようなブランド品がいくつも登場する。それを見て回って試着したり買ったりしている主人公を想像すると、なんとも「惨めだなぁ」と思うわけだ。でも、川上さんならむしろ相応しいくらいに感じる。

どうして主人公は相応しくないんだろう?とふと思った。誰が買ってもココア・ミラージュはココア・ミラージュだし、誰が遣っても1万円は1万円だ。主人公にココア・ミラージュは相応しくない、という思いは、どうして湧いてくるんだろう。

 

この感覚はきっと、主人公が金持ちの老女を蔑んでいる感覚と似ている。「自分よりも価値のなさそう」な人間が「価値が高いとされているもの」で身を固めていることへの蔑みを感じると同時に、価値に固執している自分に気付いて嫌悪感を抱く。いやぁ川上さん、人間の暗部をえぐるよねぇ…と脱帽だった。

 

とまぁ、タラタラ所感を語ってみたけど、川上さんがどういう意図で書いたのは分からない。本気でココア・ミラージュ推しで書いただけかもしれないし(笑)

こん感じで、読めない女・川上未映子にすっかりハマったのでした。